秋の古本まつり

今年も「秋の古本まつり」(於:百万遍 知恩寺)が11月1日(水)〜5日(日)に開催されます。
キクオ書店(前田 司店主)も出店されます。
京都古書研究会40周年記念特別誌への投稿を掲載いたしました。
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初心忘るべからず
前田 司(キクオ書店店主 京都古書研究会初代代表)

京都古書研究会創立四十年を迎えて、めでたくもあり、めでたくもなし。記念誌にいきなりこんな嫌みを言うのも、会の発足メンバーの一人の繰り言としてお許しいただきたい。
「京都古書研究会」とまるで立派な学会のような名前で呼ばれているが、これが略称であることを知る人はすくなくなっているのではなかろうか。すでにお蔵入りしてしまったがこの会の正式名称は『古書店経営を研究し、企画し、それを実践する会』である。
文化の担い手である書物を商う中心地として京都があり、近世からは江戸、大阪とともに三都がそれを支えてきた。しかし近代それも戦後は東京の政治経済の中央集権化が古書の世界にもおよび、京都は昔年の勢いが失われていた。
そこで四十年前、これではいかんと古書店の二世を中心とした若者が集まった。さてどうしたらいいのかわからぬものの、アンチ巨人のタイガースフアンと同様、東京なにするものという熱気に燃えるエネルギー集団ではあった。
古書業者として知らねばならぬことは山ほどあり、まずは書誌的な知識から経理や儲け方にいたるまで常時研究会を開いて研讃に努めた。教えを乞う先輩や学者は豊富である。
一方、衰退する京都の古書業界の振興のため、また東京にとられた古書ファンを取り戻すには何か事業を始めねばならない。鴨川や新京極の広場で古本市、古本講演会や企画展、機関紙の刊行などなど、エネルギー集団のマグマは次々噴火する。しかしアイデアだけではダメ、これをしっかり企画して実践せねばならない。この活動の流れから、あの長ったらしい会の名称がつけられたが、端折って『古書研究会』さらに短く『古書研』と呼ばれるようになったが、活動が端折られることはなかった。
発足まもなく、野間光辰先生から名付けていただいた『京古本や 往来』の機関紙を季刊で発行して古書業者とお客様との絆をもった。また京都古書店地図の刊行を記念して、全市の古本屋が目玉商品をアピールする『古本まつり』を企画、実践した。この勢いで秋に百万遍のお寺の境内で本格的な古本まつりを立ち上げた。
すでに東京の神田古書街では恒例の古本まつりが盛大に行われている。東京の二番煎じでは京都の名折れである。それに新参の催し物。古本屋が古本を売っても新聞記事にもならぬ。報道に受けるにはパイオニアであらねばならない。
そこで京都ならではの「古本供養」という世界でも初めての行事を考え出した。さらに古本供養を終えた古本をオークションで販売して、書物は永遠に生きることをアピール。一方、未来の古書ファンを育てるために「児童本コーナー」を設けた。売上金は新しく建設される京都市立図書館の児童本購入費として寄付した。思惑通り報道も取り上げてくれた。四年目にはNHKが全国放送。京大の屋上にもカメラが据えられての実況中継に、高い広告代を払わなくとも宣伝する法という日
頃の研究成果が実現した。
秋の古本祭りが評判になると他の時期にも開催してというお客様の声が大きくなり春の岡崎、夏の下鴨神社とイベントが加わってきた。京都市立の図書館が完成した時はそれを祝って古書即売会とともに、報道へのアピールで『京都のガイドブック今昔展』や『子供の遊びと学び展』を教育委員会との共催で開催した。日頃の研究会の発表の場でもあった。
こうした積み重ねがいまや報道には「伝統行事」として紹介されるようになった。めでたいことである。
しかし一方、この伝統行事にエネルギーを費やしすぎて、新しい企画を生み出すマグマが薄れ、東京を追い越すべき古本屋の質の向上が疎かになっているのはめでたくもない。
若いエネルギー集団よ、初心忘るべからず。
[京都古書研究会 秋の古本だより「青空」40周年記念特別誌5号特集「衣食住」より]

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